鬼あし講談：正岡子規と樋口一葉が初心な出逢い
(2010年11月)

2010年11月30日 (火) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑后ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　その、ヒグチナツって云う怖い名前を、暑苦しい名前だね、と云ったのが、子規さんだろ。ついでに、そんな暑苦しい名前じゃ、せっかく書いた小説が売れねえぜ、なんなら、あたしが、ペンネームをプレゼントしてやろうか、ってね。まあ、そんな噺で、火口じゃなかった、樋口一葉って芸名が誕生したんだ。

2010年11月29日 (月) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑検“�口一葉＠火口イチョウ
　そう、あたしも、５歳ぐらいの少女の頃に、本郷に引っ越してきたんだけど、この当りが振袖火事の火元、火口だって、さんざん、聞かされて、火の用心が大事だって、子供心にも、よ〜く思い知ったわ。それに、釜戸の火口に、キセルの火口もあって、身の回りには火口だらけ、ヒグチナツ、って云う、あたしの名前は、怖い名前だなぁ、と感じてた。

2010年11月27日 (土) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑掘＼飢�子規＠まさ可笑しき
　その明暦の大火、別名が振袖火事の噺は、あたしが東京に来て直ぐ、厄介になった赤坂あたりの下宿の旦那さんから聞かされた、ね。まあ、江戸東京は昔から、火事と喧嘩の多い処だから、田舎者は特に注意しな、って按配なんだろう。それで、本郷の炭団坂の上の常磐会の寄宿舎に引っ越したとき、ああ、この当りが、振袖火事の火口なんだ、って。

2010年11月26日 (金) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑供ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　まあ、銀杏の黄葉は、今が真っ盛りなんだが、大阪生まれのご隠居の目から見ると、この江戸市中は銀杏並木の多い処なんだ。でね、ある時、ふと気が付いた。あの明暦の大火、１６５７年の三月に出火した、振袖火事って云われる大火だが、その出火地点が、本郷菊坂の北側に、当時、大きな伽藍を抱えてた本妙寺だったのさ。

2010年11月25日 (木) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑機“�口一葉＠火口イチョウ
　年寄の冷や水か、なんか、あたしに芸名の樋口一葉を送った、子規さんの目論見と似ているわね、一言で云うと、樋口一葉ってのは、火口・銀杏＝ひぐち・いちょう、なのよ、まあ、今じゃ、「いちよう」と書くと「いちよう」としか読めないけど、昔は、「いちょう」とも読めてね、その当りの、「いちょう」＝「いちよう」が、子規さんの洒落っ気なのさ。

2010年11月24日 (水) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑粥＼飢�子規＠まさ可笑しき
　そうなんだ、恥ずかしい噺だが、自分にはない小説を書く才能を、一葉さんが持ってる、ってのは、一葉さんの匂いで分った。まあ、鬼あしのご隠居も、伊達に歳を喰ってる訳じゃないから分る、と思いが、自分にない才能を持った若者に、何かしらの支援をして上げたい、ってぇ、気持ち、ええ！年寄りの冷や水だって！

2010年11月22日 (月) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑魁ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　その人を舞い上がらせる、ってのが、子規さんの真骨頂さ、まあ、豚でもおだてりゃ、木に登る、って云うからねぇ。それにさ、この子規さんは、男女の色恋には、勘が鈍いけど、本人以外の文芸の世界、文字の世界となると、不思議と勘が冴える？ってぇ云うより、批評が当る、のだ。だからさ、一葉さんが大小説家になる資質を嗅ぎ分けた、のさ。

2010年11月21日 (日) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑押“�口一葉＠火口イチョウ
　そうか、あたしと再会した子規さんが小説への未練を捨てた、その時、あたしは、逆に、小説を書く意欲が湧いた、の。その訳はさ、ご隠居が睨んだ通り、子規さんが送ってくれた、一葉、と云うペンネームと、源氏物語を書いた紫式部の生まれ変わり、だと云ってくれた激励だったわ。あたしゃ、この一葉と紫式部で、すっかり、舞い上がっちゃったの。

2010年11月20日 (土) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑院＼飢�子規＠まさ可笑しき
　そうなんだ、一葉さんと再会するまでには、なかなか俳句一本に的を絞れず、散文の小説にも色気を絶ちがたい、未練があった。でもさ、一葉さんが、小説家を志している、って聞いて、どんな中身だとか、筋書きだとか、いろいろ尋ねてる内に、ああ、あたしとは、随分と次元違う、高い観点だな、と感じて、その途端に、あたしから、小説への未練が失せたんだ。

2010年11月19日 (金) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸僑亜ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　そう、一葉さんの云う通り、根気のない、飽きっぽい、冴えない男の子規さんが、たった一つ、飯より好きなモノがあった。まあ、本人は、こんなモノじゃ、飯を食って行く事ができないと、若い頃は、その好きなモノを、手放そうとしてたんだが、結局は、捨てきれない、って云うか、自分でも、あたしには、これしかない！と腹を括った、その転機が一葉さんとの再会だった、て云う訳さ。

2010年11月18日 (木) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅后“�口一葉＠火口イチョウ
　そうね、和歌とか俳句じゃなく、小説には、登場人物、場面、展開とか、あらかじめ頭の中で、考えて置かなければならない、面倒臭い事が多い、のだけど、その面倒臭い処が、好きだ！って云う人にしか小説は書けない、まあ、残念ながら、正岡子規には、その面倒臭いのが嫌いだった、って訳ね。まあ、根気のない、飽きっぽい、って云う、何をやっても冴えない男さ。

2010年11月17日 (水) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅検＼飢�子規＠まさ可笑しき
　まあ、鬼あしのご隠居の云う通りでして、あたしは何事にも、一応は努力を惜しまない性質なんですが、その努力の進める方向が間違ってるのか、全く報われない努力が多く、結局、骨折り損のくたびれ儲け、って按配さ。小説もそうで、あんな物、俺なら簡単に書ける、って始めたんだが、どっこい、そうじゃない、筆が進まない、ストーリーが展開しない、性格描写ができない、いやはや、小難しいもんさ。

2010年11月16日 (火) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅掘ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　そう、子規さんは見かけは帝国大学生、なんだが、大学の講義には、からっきし、ご縁がなくて、下手の横好きで小説を書いては、回りから、散々な酷評を受けて、自信をなくす、おまけに、血を吐いせいで、体の調子は悪い、それに、若い男にとって致命的なのは、まるっきり、女にご縁が無い、って云う情けない噺さ、なあ。

2010年11月15日 (月) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅供“�口一葉＠火口イチョウ
　銀杏返しの髪型か、流行ったわよねぇ、あたしも結ってたけど、あの髪型は少女から老婆まで、まあ、貧乏臭くなりやすかったけど、幅広い年代の女性が、結い上げて、明治の匂いを発散させながら、往来を闊歩したもんさ。そんな、銀杏返しの黒髪の一葉さんに、ばったりと、三度目のご対面をなさったのが、帝国大学生の子規さん、って訳さ。

2010年11月14日 (日) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅機＼飢�子規＠まさ可笑しき
　確かに、鬼あしのご隠居の云う通り、晩秋から初冬にかけて、江戸東京ってぇ処は、名物の銀杏の葉が黄色く色づいて、そこかしこが黄金色に輝く、あっしら、四国は伊予松山の田舎者から見ると、江戸の晩秋は、銀杏の葉っぱと銀杏の実で、埋め尽くされる黄金色の世界さ。でね、当時は、銀杏返し、って髪型を、娘さんから年配のご婦人まで、結い上げるのが流行ってた。

2010年11月13日 (土) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅粥ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　そうかい、まあ、二人とも、若い割にはパっとしない、生活を送ってた、って処だねぇ。まあ、あたしも、ランニングの観光屋って商売柄、小石川から本郷菊、東京大学の構内を通り、無縁坂から上野の不忍池の辺に出る道筋を使うけど、今頃から師走の初めにかけて、落ち葉が足元に絡みついて、いやはや、江戸風情って云うか、良い心持だよ。

2010年11月12日 (金) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅魁“�口一葉＠火口イチョウ
　あたしもね、中島歌子先生の萩の舎、じゃぁ、歌子先生の跡継ぎ、とか何とか、云われちゃいたんだけど、萩の舎の女中扱いに嫌気がさして、おっぽり出たまでは良かったんだけど、まあ、世間の水は冷たいもんよ。母と娘の三人が、身を寄せ合って、本郷菊坂の裏長屋で、やっとこさで、生活してた、って按配さ。

2010年11月8日 (月) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅押＼飢�子規＠まさ可笑しき
　まあ、勝手気ままと云われちゃ、身も蓋もないけど、まあ、あたしもさ、とうに二十歳を過ぎたけど、未だに、人に自慢できる芸、って云うか、特技が見つけられないまま、年を重ね、気がつきゃ、東京帝国大学生さ。確かに、後輩を集めちゃ、俳句を捻る会を続けちゃいたが、果たして、俳句が、あたしの芸、特技になるか、はなはだ、自信はなかったよ。

2010年11月5日 (金) 第三幕　子規が一葉と名付ける法真寺＠明治２４年１１月
�癸毅院ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　さて、子規さんは、東京帝大に入学してからも、本郷炭団坂上の常磐会宿舎に棲み続け、どう云う訳か、英文科から国文科の転科したって聞くが、どうせ、国文科に替わっても、大学の講義には、全く出席せず、勝手気儘に、俳句三昧の生活を送ってたんだろ。でもって、その炭団坂の下に一葉さん親子が、引っ越して来たんだなあ。

2010年11月4日 (木) 第二幕　子規が一葉を見初める太田神社＠明治２３年８月
�癸毅亜ゝ簡…盂С據�鬼あし一門会
　そうか、仏の顔も三度まで、ってことわざがあるが、あんたたち、子規さんと一葉さんも、偶然の出逢いってぇ、奴が三回もあった、って事は、偶然じゃなく、ある種、必然って訳だなぁ。でもって、その必然が、お二人に、何をもたらしたか、さあさあ、第三幕は明治２４年の初冬が始まり、始まり・・。

2010年11月2日 (火) 第二幕　子規が一葉を見初める太田神社＠明治２３年８月
�癸苅后“�口一葉＠火口イチョウ
　その中途半端な、あたしと子規さんの出逢いが、一気に半端じゃなくなった、ってのが、その一年後の初冬、東京中のイチョウの木が色づいて、黄金色に輝く頃だって訳なの。まあ、この三度目の出会いは、あたしも、子規さんとの運命的な関係を感じたわね。あら、やだぁ、ご隠居！変に気を回さないでね。あたしら、あくまでもプラトニックよ。