鬼あし講談:正岡子規と樋口一葉が初心な出逢い
(2010年10月)

2010年10月30日 (土) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅検\飢子規@まさ可笑しき
 まあ、鬼あしのご隠居に、ズバリと云われちゃ、見も蓋もないけど、本当に、あたしはさ、自分でも云うのも何だが、ここ一番!ってぇ時に、ドジを踏む、それも大ドジを踏んじゃう、情けない男なのさ。それに比べると、秋山真之さんは、ここ一番って時に、糞力が湧き出て、度胸千両の大活躍を演じるんだな、まあ、そんな事で、明治23年の8月の大田神社の出会いは、中途半端な結末さ。

2010年10月29日 (金) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅掘ゝ簡…盂С據鬼あし一門会
 そうなんだ、江戸っ子が好きな洒落が身に付かないと、いつまで経っても、田舎者の男は江戸小町を口説けない、ってんだが、その洒落を身に付けたって、必ずしも、口説ける、ってもんでもない。まあ、何て云うか、この子規さん、って方は、男女の出会いの、いざ!鎌倉って、一番肝心要の時に、ドジを踏む人なんだよ。

2010年10月28日 (木) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅供“口一葉@火口イチョウ
 そう云えば、あたしが、ちょくちょく聴きに云った本郷の寄席にも、一見して、田舎者だ、と分る男たちが、来てたわね。やっぱり、江戸っ子の言葉は、江戸でしか、聴けないからねえ。それに、寄席じゃ、言葉以外にも、自然と、江戸っ子の情緒や気風が匂ってるし、何てたって、江戸っ子の好きな洒落が身に付くわよ。

2010年10月26日 (火) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅粥ゝ簡…盂С據鬼あし一門会
 まあ、そう云う事さ、まあねぇ、訳は簡単な噺で、正岡不如帰じゃぁ、洒落にならないが、正岡子規なら洒落になる、ってぇ処が味噌さ。こんなトッポイ顔してるけど、これでも、上京したては、江戸小町に持てようと、あの秋山真之と連れ立って、あっちこっちで、娘を見ると、手当り次第に、ちょっかいを出してたのさ。まあ、一人も、引っかからなかったけどね。

2010年10月25日 (月) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅魁“口一葉@火口イチョウ
 そうね、あたしも、鳴いて血を吐く鳥がホトトギスなら、別段、子規と言う漢字でなくても、不如帰、時鳥、郭公、沓手鳥、濁魂・・とか、色々な漢字が当てはまられてるから、正岡不如帰でも、正岡時鳥でも、正岡郭公でも、良かった訳よ。それが、正岡子規に落ち着いた、って事は、子規じゃないと、いけない訳があったって事ね、ご隠居さん。

2010年10月24日 (日) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅押\飢子規@まさ可笑しき
 あれ、バレたのかい、鬼あしのご隠居には、怖い人だね、あんたは、あっしが子規って通り名を付けた訳は、子規=ほととぎす=啼いて血を吐く鳥、って事だと、決まっちゃいる。弟子を始め、学者も歌詠みも、全部そう思い込んでるんだが、鬼あしのご隠居、あんたは、そうは思っちゃいない、こいつは参ったなぁ。

2010年10月22日 (金) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅院ゝ簡…盂С據鬼あし一門会
 そうか、確かに子規さんは、その頃から、子規って云う通り名を使うようになっちゃいるが、その訳は、一年前に胸から血を吐いた時、思わず、冥土から来る鳥ホトトギスを思い出した、ってんだが、こりゃぁ、噺が上手すぎて、鬼あしのご隠居には通じねえ。まあ、ホホトギスって鳥は、鳴くとき、口の中の赤色が目立つので、「啼いて血を吐くほととぎす」って云われちゃいるがね。

2010年10月21日 (木) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸苅亜“口一葉@火口イチョウ
 そうなの、まさに「まさ 可笑しき」って処、本当に可笑しかったわ、まあ、暫くして、落ち着いて来ると、体の震えがなくなって、顔の赤いのも消えて、さ、そうなると、今度は妙に、恥ずかしがるのよ。まあ、相変わらず、黙ったままでね、あやすような品を作ると、ようやく、口を開いて、「俺が、正岡子規だ」って云うのよ。

2010年10月20日 (水) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械后\飢子規@まさ可笑しき
 そうなんだ、俺って、女を目の前にすると、血が頭に昇って来てさ、顔が真っ赤になり、体中が熱くなる、まあ、初心な男なんだ。あん時もそうで、目の前にいるのが一葉さん、って気付いた途端、見っとも無い姿になって、しばらく、何を云ってるのか、全く、記憶にないのさ、それで、暫くしてから、ようやく落ち着いた、って按配さ。

2010年10月18日 (月) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械検ゝ簡…盂С據鬼あし一門会
 そう、そうかい、それにしても偶然、って云うか、上手い事顔を合せたもんだなぁ。となると、子規さんは、1年前の湯島天神境内で、一葉さんを見かけているから、すんなりと、その後は、二人の間に噺が進んだ、んだろ?えぇ!違う、そうじゃない、子規さんが、顔を真っ赤をし始めて、おまけに、体がブルブル小刻みに震えだしたって。

2010年10月16日 (土) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械掘“口一葉@火口イチョウ
 そうだったわよねぇ、あたしもさぁ、何があったのか、分らなかったのよ。だって、牛天神の境内で、書き始めた小説の文句を、口に出して読んでたら、いきなり、「は〜い」って大声が、背中の方から聞こえて、振り返ると、子規さんが、キョトンとした顔つきで、あたしを見てるのよ、それもさ、子供っぽく、あどけない顔つきでね。

2010年10月15日 (金) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械供\飢子規@まさ可笑しき
 へへ、鬼あしのご隠居、図星だよ。そりゃそうだよ、全く予想もしていない処で、いきなり、若い娘の声で「マサオカシキ!」って聞こえるんだもの、思わず、「は〜い」って答えたよ。で、振り返ると、この一葉さんが、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔してるんだもの、お互いに顔を見合わせた、その途端に、どっと大笑いさ。

2010年10月13日 (水) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械粥“口一葉@火口イチョウ
 そうなのよ、その頃はあたしも小説の勉強を始めて、牛天神の境内で書き立ての小説を、まあ、音読してたのさ、その件の中で、「正岡子規」さんの「マサオカシキ」じゃなくて、「まさ 可笑しき」の意味で「マサオカシキ」って云ったのよ。それが、まあ、偶然と云うか、事実は小説より奇なり、ってんだろうね。まあ、びっくりさ。

2010年10月12日 (火) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械魁\飢子規@まさ可笑しき
 そうさ、あの時は真夏は8月の夕方、一高を卒業し帝大に入学する前、まあ、普通の男なら前途洋洋、って気分なんだろうが、こちとらは、どうにもこうにも、すっきりしない気分、いえね、1年前に喀血してから、柄にもなく小説を書き始めたんだが、上手く書けないのさ、そんなナイーブな状態で、半分、やけくそで、正岡子規って名乗り初めて、その「マサオカシキ」って名前を、突然、大声で呼ぶ女に出くわしたのさ。

2010年10月10日 (日) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械押ゝ簡…盂С據鬼あし一門会
 なるほで、子規さんは太田神社で貧乏神退治なら、一葉さんは牛天神で学芸祈願、って訳か。で、どうだったい、そんな二人が、思わず鉢合わせ、まあ、子規さんは一葉さんの顔を知ってたから、当然、子規さんの方から、一葉さんに話しかけた、って按配だろ。え!違う、一葉さんから話しかけた、って。

2010年10月9日 (土) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械院“口一葉@火口イチョウ
 まあ、子規さんは貧乏神退治のご利益を、願って太田神社にやって来たんだけど、その頃の、あたしは、萩の舎じゃ女中兼助教授として、こき使われていたから、忙しい最中を縫って、気晴らしに行ったのが、太田神社と並んで鎮座してる牛天神様、一応、道真公に学問学芸の成就を、祈願する、って按配ね。

2010年10月8日 (金) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸械亜\飢子規@まさ可笑しき
 違うんだよ、ご隠居、牛天神じゃなくて、その脇に鎮座している太田神社が、お目当てだったのさ。いえね、常盤会の宿舎の後輩から、「ノボさん、貧乏神を追っ払う神さんが、神田上水脇にあるよ!」、って聞いたもんで、そいつあぁ!面白い、ってんで、暇な数人と連れ立って、貧乏神の退治にやって来たら、一葉さんと、鉢合わせ、って按配さ。

2010年10月7日 (木) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸横后ゝ簡…盂С據鬼あし一門会
 牛天神か、天神様に牛は付き物なのに、わざわざ、牛天神って云うのが、おせっかいのような気がするね。まあ、神田上水は、あんたたちが出会った頃は、まだまだ現役の水道施設で、江戸っ子の喉を潤してた。まあ、あたしも、その辺りは、近藤勇さんの剣術道場があったとかで、訪ねた事があったさ。

2010年10月6日 (水) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸横検“口一葉@火口イチョウ
 その牛天神さまは、その頃、あたしが女中代わりに、こき使われていた萩の舎から、歩いて数分の処、神田上水の橋を渡って、参道の石段を上がった岡の上にあってさ、まあ、あたしが女中仕事の合間に一息付く場所なのよ。でね、どう云う訳か、天神様の脇に太田神社ってのも鎮座してたのよ。

2010年10月5日 (火) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸横掘\飢子規@まさ可笑しき
 まあ、出会いの顛末たって、大した噺にはならないけど、その頃は、本郷は団子坂の上にあった常葉会の寄宿舎に棲んでいて、一高をなんとか卒業し、帝大の文学部に入学する前さ。まあ、あたしにも、いろいろあってさ、気晴らしに、野球や俳句を寄宿舎の仲間と興じてる内、神田上水を見に行こう、って噺になって、出かけたら、上水脇に牛天神ってのを見つけたんだ。

2010年10月4日 (月) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸横供ゝ簡…盂С據鬼あし一門会
 でもさ、二人がばったり出くわした太田神社って聞いてるけど、正直云って、聞いた事のない神さんなんだ、だから、子規さんよ、その太田神社の説明から始めて、そもそもの出逢いの、詳しい顛末を教えちゃくられいか、良いだろ、一葉さん。

2010年10月3日 (日) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸横機“口一葉@火口イチョウ
 虚構の世界を描く、想像力か、でもさ、子規さんは、目の前にある現実を客観的、端的に他人に報せる、のは上手なのよね。まあ、あたしは、どちらかと云うと、頭の中で考え回した虚構を、本物らしく書いて、読者に喜んでもらうのが、好きなんだな。結局、あたしの現実は貧乏暇なし、母娘三人が食べて行くのが、精一杯、右往左往の連続で、バッタリと出くわしたのよ、子規さんと。

2010年10月1日 (金) 第二幕 子規が一葉を見初める太田神社@明治23年8月
癸横粥\飢子規@まさ可笑しき
 おっと、鬼あしのご隠居、白状しな、って云われてもね、まあ、正直に喋っちまうと、あたしもさ、湯島天神で一葉さんを見かけて以来、コロっと忘れちまってた。まあ、あの頃は、血を吐いたり、俳句以外にも小説とかに色気を出しちゃ見たが、結局、あたしには、小説とか云う虚構の世界を描く、想像力ってのがない、からっきしない、ってのが分ったのさ。