コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.693

◎NHK大河『功名が辻』、山内千代は戦国長距離走チームの女性采配者ですよ! (その4)
〜軍事ではない情事の運び屋は湖東近江ランナー〜

 1月15日、NHKの大河ドラマ『功名が辻』は第2回目の放送でしたね。最後のシーンでようやく、お待たせの千代に扮する主役、仲間由紀恵さんが何と、馬に乗って登場、さすがは大石静さんのシナリオ、戦前は国定教科書も絶賛、内助の功は名馬購入の逸話に繋がる布石と感じましたよ。仲間さんの後ろの馬に乗っていたのが、筒井道隆さん、2年前の大河『新撰組!』では京都守護職の会津藩主、松平容保を演じていた二枚目ですね。

 功名が辻の舞台は、一豊が裁量した長浜城下から掛川、高知へと移ります。その二番目の掛川市、現在は一豊の手になる掛川城が再建され、三層の木造天守閣が優美な姿を見せる一方、城の南に並ぶ旧東海道筋の宿場は黒瓦と城壁の町並み整備が進んでいます。この仲町交差点角の清水銀行掛川支店は新築二階の和装建築、歩道に面する白壁には『鎧兜姿に槍を携えた一豊が名馬に跨り、賢妻の千代が手綱を引く』構図の浮き彫りが飾られていますよ。

 さて情報の話です。山内家でも、一豊が留守中の城と遠征先の間に純粋な軍事上の情報(=英単語:information)の運び屋がいました。この運び屋は脚が達者で腕力があり、通過する土地訛りが使い分ければ、お役目は達成でき、ご苦労さんでした。ところが、千代が認めたのは軍事情報ではなく、徹底的な描写スタイルで書き綴った民百姓たちの『情けの報せ&情けの報い(=独単語:Nach−Richt)』、でした。

軍事ではなく情事、よく言う男女間の秘密の情事ではありません。千代が認めた「・・某の倅と・・某の娘が良い仲だ」は、遠征先の家来全員が集まった席で、一豊の口から読み上げられます。・・某も・・某も情事の運び屋も、その席にいます。情事の運び屋は、この席全体の雰囲気と、それぞれの情事の関係者・・某と・・某の反応、感想などを、取材し、遠征先の家来の情けを徹底的な描写スタイルで留守城の千代に報せるレポーターでした。

 さあ、このレポーターの適任者が古来から水陸の交通要所、近江に多くいた、のです。このセンスは後々、近江商人と言う商業システムで全国を席巻しますね。近江から鈴鹿山脈を越えた北伊勢地方には、この近江センスを持つお嫁さんが多数嫁ぎました。標高640mの鞍掛峠は別名、嫁取峠とも言われ、近江のお嫁さんが、故郷を振り返る最後の頂きでした。この鞍掛峠と石縛峠の二つの急峻を攻める鈴鹿サーキットアスロンを開催します。皆さん、近江湖東から伊勢北勢まで千代湖道ランナーを再現しませんか。


 <走談家>      藤田 俊英 (06/01/23)





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