コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.590

◎今年は『ランニングシティ桑名』の実現を目指す最初の年です その2
〜発案者の市長は元現代建設社長、選挙公約を全額ソウル市の予算で執行〜
 清渓川の視察結果を土木関係者向きのレポートにまとめました。

 韓国のソウル市で大胆なリストラが進行中です。ただし、日本で進行中の人員リストラでなく"Cheonggyecheon Restoration"と言う名称の都市河川の復元工事です。対象となるチョンゲチョン(清渓川)は、約4百年前までは文字通りの清流でしたが、16世紀末の人口急増により下水路となりました。そして、1950年代になって川底から地表まで6mの空間を残したままコンクリートで覆蓋・道路化され、さらにその上を71年に幅員が16mで往復4車線の高速道路が開通し、1日の交通量は約16万8千台でした。
 清渓川復元工事の総額は円換算で360億円、同じ工事を日本で施工すると3倍の約1千億円になると言われています。昨年7月に着工し、延長5.8`の工事区間を3工区に分割し、11の作業チームを同時施工させることにより工期短縮を図り、来年9月が完成予定です。工事の流れは簡単、まず、高速道路に続いて覆蓋を撤去し、川底に積もった4百年間のヘドロを浚い、川底地下に2本の下水管を敷設し、最後に清渓川の昔の姿を復元します。現在の工事状況は高速道路の撤去が完了し、覆蓋とヘドロの撤去が進行中です。
 以上の知識を持って土木学会関西支部の「都市河川の川づくりと利用に関する史的調査研究委員会:委員長は角野昇八・大阪市立大学教授」は6名の視察団を編成し、1月4日から6日までの現地調査を実施しました。その結果、この委員会の活動目的、「人々と都市河川の間の良好な関係の再構築に向けて」の壮大な実証プロジェクトが韓国ソウルの清渓川で展開中だと確信を深めました。今や、世界中から新しい土木事業の概念、「開発から復元」を唱える土木関係者が息せき切って韓国ソウルの清渓川の復元工事を我が目で確かめています。
 清渓川はソウル旧市域の江北地区を西から東に流れ、西端は市庁広場に近く、東端はファッション街として有名な東大門に近い。工事区間の西端には3階建ての広報センターがあり、女性中心の20数名のボランティアが運営しています。我々の顔を見ると、日本語が堪能なボランティアが丁寧に対応してくれて理解が深まり大助かりでした。館内には昔のきれいな川の時代から、ドブ川そしてスラム街、さらに高速道路時代から復元工事中、そして完成後の周辺再開発計画に至るまでが延長10数mの模型で分かりやすく展示されています。
 この工事の発案者は現代建設社長からソウル市長に転じた李明博(イ・ミョンバク)氏、2002年6月の市長選挙時の公約です。撤去した高速道路も復元する清渓川もソウル市の所有、さらに360億円の工事費も全額ソウル市が負担します、日本では考えられない韓国の社会構造のパワフルさが垣間見えます。読者の方々にも御一見をお勧めします。日本が進めようとしている都市再生事業の土木バージョンとして大変参考になる事例だと確信します。残る期間は来年夏まで、さあ早い内にご家族共々、気楽な観光気分でどうぞ。

 <特定非営利活動法人・市民歩走者学会(CReW) 会長>      藤田 俊英 (04/01/12)





前のページへ戻る