コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.384

天保の浮世絵師、歌川広重はRUN&WALKに東海道53次 第6幕
〜「大津 走井(はしりい)茶店」の絵に美空ひばりの若侍姿を思い出します〜
 広重53次、54番目の浮世絵が「大津 走井茶店」です。走井とは「はしりい」と読んで、こんこんと湧き出す名水のことです。まさに、ランニングな表現ですね。江戸から上る東海道の最後の宿場が大津、そこには名物の走井茶店があって、その店先の向かって左端の方に、名前の由来の走井がコンコンと湧きだしています。

 広重の絵では、走井の脇で魚屋でしょうか、天秤棒から二つの桶をはずして、何かしています。よくわかりません。桶を洗っているのでしょうか。魚屋の脇で子供が1人、じゃれています。旅の子供ではないようです。店の軒先には、青地に白で「走井」と染め抜かれた暖簾がぶら下がっています。店内に客が5人、特段何か食べたり飲んだりはしていません。

 絵の中央から右端にかけて、店先を通過しようとする牛車が3台描かれています。1台は米俵を積み、1人の牛子が1頭の牛を先導しています。残る2台は縦に繋がって、1人の牛子が2頭の牛を誘導しています。この2台は炭俵を積んでいます。この近くの農家が京に届ける米と炭なんでしょうか。牛の姿が何ともユーモラスに描かれています。よく見ると、3頭の牛には牛車から日除けが施されています。

 解説を読むと、現在この走井は涸れてしまっているそうです。旅人と水は切っても切れない関係、昔は竹の筒が水筒代わりでした。子供の頃の東映映画を想い出しますね。旅の途中で腹具合が悪くなった美空ひばりちゃん扮する若侍が道ばたでうづくまっています、通りかかるのが中村錦之助扮する渡世人です。道から逸れて、谷川に降りていって渓流の水を竹筒に入れて戻ってきます。薬は若侍が持っています、飲み込む水がなかったから薬が飲めなかった、そんなシーンでした。

 <東京シティマラソンを実践する東京ロードランナーズクラブ>  藤田 俊英 (01/08/30)





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