コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.383

天保の浮世絵師、歌川広重はRUN&WALKに東海道53次 第5幕
〜「草津 名物立場」の絵は、忠臣蔵の早駕籠2連駆けを思い出します〜
 広重53次、53番目の浮世絵が「草津 名物立場」です。名物の「うばがもち」を売る茶店の店先を描いています。そこを2組の駕籠が通りかかっています。1組は4人のふんどし姿の駕籠かきがゆっくりと担ぐ貨物駕籠、です。何が駕籠の中に収められているか不明です。かなり重たそうな感じです。今で言う貨物トラック駕籠ですね。

 もう1組は今で言うスポーツカー駕籠です。5人の駕籠かきが一目散に走っています。駕籠の中の乗客は必死に天井から垂れた綱を握りしめています。どんな緊急の報せを届ける途中なのか気に掛かります。時代劇の忠臣蔵を思い出します。元禄14年3月19日の未明に播州赤穂に2組の早駕籠が着いています。江戸から4日半をブッ通しで駕籠で揺られ続けた早水藤左衛門と萱野三平が息も絶え絶えに転がり出ています。

 元禄14年は西暦1701年ですから、1797年生まれの広重は忠臣蔵・赤穂浪士の歴史的事実はよく存じていたはずです。この早駕籠を描くとき、このことを思い出していたかも知れません。うばが餅屋の店内の穏やかさ、貨物トラック駕籠の重々しさ、スポーツカー駕籠の俊敏さ、これらが妙なバランスを醸し出しています。

   以上、8番目の平塚、42番目の宮、44番目の四日市、46番目の庄野、53番目の草津にランニングな街道姿が巧みな筆裁きで描かれています。現在、東海道はいたる所で400周年の行事が盛り沢山に開催されています。広重の浮世絵の展覧会もあちこちの美術館で人気を呼んでいるそうです。

 広重はランニングな街道人物の描写だけでなく、ランニングな歴史的遺跡を描いています。最後の宿場、大津です。

 <東京シティマラソンを実践する東京ロードランナーズクラブ>  藤田 俊英 (01/08/30)





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