コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.295

◎第13回ランニング学会大会のレポートですよ その5
〜NYRRCのロスさんの講演、フレッド・リボーのコダワリを紹介する〜
 12時丁度にパネルディスカッションを終えました。終わってみると、あっけない物です。気持ちを切り替えて、午後2次からの特別講演「ニューヨークシティマラソンを語る」に臨みます。講演者は、NYRRC(ニューヨークロードランナーズクラブ)役員のアラン・ロス氏です。NYCマラソンに参加した人なら、必ず記憶に残る方で、十数カ国の言葉を操って本番のスタート前のセレモニーを進行する名物司会役です。米国の陸連の要職にも就任されています。

 講演が始まりました。まずは、歴史の話です。生みの親で育ての親でもある、ルーマニア移民の故フレッド・リボーさんの逸話が紹介されます。今から30数年前の第1回大会でセントラルパーク周回レースを立ち上げた頃の話から、NY市を巻き込んでの5区を巡るコースへ移行する舞台裏の話とか、興味溢れる内容です。

 後半は、日本人には理解しにくい「ボランティア精神」とNYRRCの活動に関した内容です。米国市民は義務としてボランティア活動に参画する、これが前提の米国社会ですから、NYCマラソンの開催を支えるボランティアには、日本で良く見かける高校生や大学生の陸上競技部員が駆りだされてマラソン大会の沿道整備を引き受けるのではなくて、一般のニューヨーカーがいとも簡単に参画しています。

 やはり、市民マラソンは陸上競技色を排除した雰囲気で開催し、ありとあらゆるジャンルの市民ボランティア、福祉や介護や環境や育児や・・のボランティアも方々がよってたかって市民マラソンの開催を支える、そんなスタイルがよろしいようです。

 フレッド・リボーはNYCマラソンにチャリティー活動を導入しませんでした。チャリティー分野に資金が流れると、NYRRCの活動費が減少し、長続きしないと考えたからです。まず活動母体を健全に存続させることが重要だ、というポリシーですね。それに、ランナーの存在自体がNYCにとって重要なチャリティー活動であるとの、強烈な自負心がリボーさんにあったんですね。

 <東京ロードランナーズクラブ> 街づくりランニング商会  藤田 俊英 (01/03/25)





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