コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.220

第31回NYシティマラソン、町づくるランニングレポート 第23幕
 「都市環境研究会、河川環境展、道路使いセミナーをまとめてNYCマラソン」報告

 日刊建設通信新聞12/06日の第2面に掲載された私のNYCマラソン報告です。

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私論時論24                  トレンド・アナリスト 藤田 俊英

     「NYCマラソン、三百万人観衆が人間大河に多自然型護岸」

 十一月五日午後一時過ぎ、イーストリバーを跨ぐクィーンズボロ大橋の下段車道を渡り終え、人間大河と化したマンハッタンの一番街の大声援を浴びる。三万人以上のランナーが流れをなし、三百万人もの観客が護岸を呈する、そんな光景がコース四十二`を彩る。
 大統領選挙の七日朝、JFK空港を離陸する。機内で手にした<USA TODAY>紙の経済面、“日本の十七ビリオン$空港が沈没する?”なる見出しが関西国際空港の地盤沈下を大きく報じ、日経新聞の国際版第一面は、同空港二期工事の資金計画見直し記事を掲載していた。

■秋葉原の都市環境研究会、走りたくなる河川整備
 二十七日午後五時、秋葉原駅に近いビルの二階で開催される『都市環境研究会』の十一月例会に参加する。研究会を運営する日本大学交通土木工学科の教授、三浦先生から依頼を受けて、『コロラド州ボールダー市の走りたくなる河川整備他〜尚子とシモンの高地トレーニングを支えたもの』なる演題の講師を演じる。会費制の集まりに何人参加されるかと気にかかりますが、準備された椅子がほぼ埋まる顔ぶれを確認して気合が入ります。
 用意したOHP四十五枚を順番に写しながら、都市ランニング環境整備の最新事例を紹介する。日本の事例は、都下東久留米市の黒目川のジョギング・ウォーキング歩道、静岡大井川河川敷マラソンコース、荒川下流の東京荒川市民マラソンです。川の水面からほど遠いとか、横切る車道と平面交差とかで、走りたくなる河川整備には程遠い代物です。
 米国のハードな事例に、オレゴン州ポートランド市の岸壁プロムナードとコロラド州ボールダークリークの専用トレールを選ぶ。水面に近く波音が聞こえ、車道とは全て立体交差の整備ポリシーが、走りたくなる河川整備の原点と伝える。ソフトな事例は、河川構造物を使いこなすランニング大会を語る。四万五千人が参加するボールダーの十`大会と完走したばかりのニューヨークシティ・マラソンの話題だ。話すにつれて、ニューヨークの都市景観に見事に調和した鉄製の百年橋梁を駆け渡った感動が蘇り、声が大きくなる。

■幕張メッセの河川環境展、ボールダーな護岸整備
 二十九日午後、千葉幕張メッセ・国際会議場で開催中の『河川環境展2000』を訪れる。<水辺の自然を活かす・ソリューション>という仮想コンサルタントを立ち上げ、千代田区の水辺環境修復事業を提唱していて、その相方が出展中だ。一巡した会場は昨年に比べ、人頭大の自然石を用いたセメントレスな多自然型護岸工法の展示が目立つ。その自然石を利用した施工事例に、ボールダークリークと瓜二つな光景を見つけて心が和む。
 主催する実行委員会委員に財日本生態系協会の池谷会長の名を見つけて、十月十七日に開催された国際シンポジウム『子どもがかがやく21世紀の都市』を思い出す。十一月二十日の本論でも紹介したが、ボールダー市都市計画部のピーター・ポラック部長が事例報告で、「税金を上げてでもオープンスペースで囲われたコンパクトシティを実現すべきだ」と発言された。報告後に会場から、「税金をどれぐらい上げたか」との質問があった。
 ポラック部長の答えが不明瞭で、気にかかる。協会に問い合わせると、オープンスペースを買収するための税収は、セールスタックス0・73%分との解答がFAXで来ます。
 ところで、ボールダーの英文スペルは“BOULDER”、玉石とか丸石の意味です。ロッキー山脈東麓、自然石を用いたセメントレスな多自然型護岸工法のボールダークリークの河川ランニング環境整備の事例は、『河川環境展2000』では見かけられません。

■虎ノ門のスポーツセミナー、NYシティの百年橋
 十二月一日午後五時から虎ノ門の日本財団ビル十階ホールに招待される。笹川スポーツ財団が主催、『道路をスポーツに開放しよう〜誰もがもっとスポーツを楽しむために〜』がテーマのセミナーが始まり、ざっと百人が参加する。毎日新聞特別委員の大島幸夫氏が、『市民のための大都会ロードレースがない日本/公道レースは公益に反するのか』と題した基調講演で、欧米の日常的な車社会と非日常的なスポーツ祭典の折り合いの見事さを力説する。
 その後、東海大学教授の宇佐美彰朗氏、トライアスリーターも白戸太郎氏、財団の藤本常務理事がパネリストで登場した討論会が続く。白熱した討論の結論は以下の二点、<日本で都心の公道を使う魅力的な市民ロードレースが少ないのは、警察が非協力的で市民が無理解>と<欧米の先進都市を真似てアジア諸国でも都心のロードレースが開始される今日、日本だけが市民ロードレースがない恥を晒している>で、ため息が会場から流れる。
 懇親会場のTV大画面には、五月のボールダーの十`大会と十一月のニューヨークシティ・マラソンのレースの様子が流れる。先進都市の市民ロードレースは、観光名所を巡るコース取りが人気を左右する。パリは凱旋門にエッフェル塔、ロンドンはグリニッジ天文台にタワーブリッジ、ベルリンはブランデンブルグ門にベルリン大聖堂、ニューヨークは五本の鉄橋、シドニーはハーバーブリッジにオペラハウス・・と、建築に土木の構造物が、非日常的なスポーツ祭典で人間大河と化した42`の道路景観と見事な調和を見せる。

 < NYマンハッタンを走り屋道楽衆 街づくりランニング商会 藤田 俊英> (00/12/7)




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