コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.195

ランナーが街づくる、千代田まちネット&桑名市民活動ネット 第4幕
 話の途中、「シドニーでマラソン金メダルの高橋尚子さんがトレーニング・・」とレシーバーから同時通訳の音声が流れます。この会場に座っている方々は、五輪ランナーの話題より、トンボやミミズや狸に狐が気になる人たちらしく、ポラックさんの尚子さんな話題は、全く会場で受けていません。

 コロラドのボールダーの新しい都市づくりは、<コンパクトシティ>と云うキーワード一言で表現できます。そのコンパクトシティの周りには、税金を上げてでも、オープンスペースを確保しています。ボールダー独自のオープンスペースを買収するための売り上げ税を、人口8万人程度の都市住民が納得した上で制定しました。多面的な機能を有するオープンスペース内に、自然価値の高い広い面積の土地を確保するこ とにより、野生生物のハビタットやコリドーの維持が可能となりました。

 で、こっからが重要なんです。すると、観光や不動産価値の上昇、雇用創出という大きな経済効果にも繋がったと云います。今、コロラドは全米50州の中でハイテク就労人口比率が第1位の、ITハイテク州となっています。全米から高い水準のIT関連技能・技術者がコロラドのデンバーに住処を求めてやって来ます。その中で、周りに自然価値の高い広大なオープンスペースを持つコンパクトシティのボールダーの新しい都市づくりに共感する人たちが、高い住宅取得コストと税金にも関わらずボールダー市民になっています。

 野生生物のハビタットやコリドーの維持が可能となる<野生生物が輝く21世紀の都市>は、<野生人間が走る21世紀の都市>でもあるということですね。先の黒川紀章さんのエコメディアシティの話題とポラックさんのオープンスペースが合わさるパネルディスカッションに期待わくわくです。でも、この会場に集まった聴衆の期待を、コーディネーターの西村幸夫・東京大学教授が物の見事にブチ壊してしまいました。ほんまにしらけたパネルディスカッションになり果ててしまいました。思い出すのもアホらしいほどです。

 私は前から2番目の席で、黒川氏の前方に座っていましたが、氏のいらだちが伝わって来ました。せっかく、銀髪のお上品な女性司会者が、「エコメディアシティについてもっと語って下さい」と云ったのに、この西村さんは完全に無視しました。しょうもない都市計画の制度論が延々と展開される、アホらしい時間が流れました。これは、西村さんの責任と言うより、こんな展開しかできない西村さんを呼んだ主催者の日本生態系協会の、<人を見る目のなさ>が原因ですね。<野生生物を見る目>は、お持ちなんでしょうが。

 <子供がかがやく21世紀の都市>なるテーマが完全に忘れられ、<自然をつなぐ、心をつなぐ>を話題からほっぽりだした空しいパネル討論の展開に、ポラックさんも唖然とされています。結局、西村さんは野生生物と馴染まない都市計画者でした。

 < 人口減少下の都市インフラ走談家 街づくりランニング商会 藤田 俊英> (00/10/23)




前のページへ戻る