コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.109

梅雨の本降り、西新宿は五輪代表の弘山晴美さんがズブ濡れ姿
 6月13日の各紙朝刊に、シドニー五輪の陸上代表に23人が追加内定の記事が掲載されます。朝日新聞一面には、<笑顔復活、弘山選手、1万mで五輪へ>の見出しで晴美&勉夫妻のカラー写真が14cm真四角で目に飛び込みます。「素直にうれしいという気持ちと、ホッとした気持ちを感じています」との感想を語る晴美さんの笑顔に、奥さんランナーの腰の座りを感じます。朝のテレビのスポーツニュースでも、晴美さんの笑顔が大きく写っていました。

 一方、日経新聞のスポーツ欄には、8日から連載中の<女子マラソン物語>の5回目に谷川真理さんが、「シンデレラ現る」の見出しでデカッと紹介されています。「24歳の春、会社の同僚たちと花見に出かけた皇居で偶然出会った女性ジョガーの姿に魅せられ、翌日から走り出した」「耳にピアス、胸には金のネックレス、女子陸上選手のイメージを変えた/お洒落なランナー、そう呼ばれたのを谷川は最高の勲章だと話す」「1週5キロの理想的なコース。そこで季節を感じながら走るのが好き」と市民ランナー出身の真理さんは、皇居集会コースを走り続けています。

 晴美さんは、3月末にコロラドのボウルダーにトレーニングに向かう前日、代々木でのランニング学会大会で、「走りたくなる街、ボウルダー」と嬉しそうに話していました。そんなことを思い出しながら、13日の9時半頃でした。西新宿の都庁第2庁舎からオペラシティタワーに向かう途中、梅雨の走りの雨が本降りな消防署前の交差点で、信号待ちをしている横断歩道の向かい側に、白いキャップを目深に被り、ダークカラーのウィンドブレーカーがグッショリなジョガーが佇んでいます。

 信号が変わり、渡り始めた横断歩道ですれ違います。晴美さんでした。勉さんのガードのない単身ジョグの最中です。キャップの長い庇から銀の滴が、晴美さん頬を伝っています。その後ろ姿が、都庁の方向に霞んで行きます。シューズの裏底の黄色が、一面が梅雨の水たまりの歩道に明確なコントラストを刻みます。今までにも、晴美さんとは、この界隈でサンザンすれ違っていますが、夫の伴走のない一人走りを目撃したのは、初めてでした。

 朝日新聞の一面の笑顔と全然違うジョガーの表情でした。出かけに、夫婦喧嘩でもされたのかと、ゲスな想像が浮かびました。そんなことは、ありませんよね。

 <走り屋・道楽衆 ヘルシーアスリーター家康研究家 藤田 俊英> (00/06/15)




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