コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.027

なのに〜なぜ〜何を捜して〜君は行くのか〜そんなにしてまで〜
 トヨタの新型クラウンのテレビコマーシャル、いいですねぇ。もちろん、買う気はありません。昭和30年代の名曲、ブロードサイド・フォーが歌った「若者たち」の主題歌がバックに流れます。「君のゆく道は〜、果てし〜なく遠い、なのに〜なぜ〜何を捜して〜」と私ら団塊世代に、懐かしく響きます。この団塊世代が全員50歳を越えて、新型クラウンに似合うドライバーになったと言うことです。

 昭和48年の11月、入社した年の秋です。復帰したばかりの沖縄に赴任しました。東海岸の与那城村の宿舎から、いまの沖縄市、当時はコザ市、の歓楽街によく通いました。まだまだ、米国の軍隊の関係者が多く駐屯していて、交通ルールも米国流でした。幾度となく、ジョギング中の軍人さんを見かけました。よくよく観察すると、兵隊さんじゃなく、士官の方々なんですね。顔つきで区別できます。

 だいたいが上半身は裸、ランニングパンツに底の厚いシューズを履いてのっしのっしと走っています。朝、昼、夜を問いません。時間を見つけて走っていたのでしょう。兵隊はそんなことはしません。団体で体を動かすのが兵隊さんの任務ですから、任務から解放されたら、だらだら過ごすだけです。

 ジョギング中の士官さんの見ての感想が、若者たちの歌詞でした。「なのに〜なぜ〜何を捜して〜、君はゆくのか〜、そんなにしてまで〜」、まあ熱いのにご苦労さんと言った感じでした。昨年6月、始めて100キロの大会に参加しました。朝5時にスタート、50キロ過ぎると熱さが行く手を阻みます。何にも捜すもんなんかないんです、でも進むんです。こんなにしてまで〜と言う気負いもないんです。結局、走ってて楽しい、体を進めるのが好きだ、に尽きます。

 あの時の士官さんも一緒だったと思います。走ってるのが楽しい、嬉しいと子供の無邪気さなんですね。だから、一番赤ん坊に近い姿して、一人で無心に自然と戯れていたかったんですね。戦国の世は、士官をランナーに仕立て上げるのかもしれません。

 <いつかはクラウン・走り屋・道楽衆 走談家 藤田 俊英> (00/02/14)




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