コラム道楽衆:「走談家・藤田の胸算用」 No.007

開拓民の子孫は走り好き、観光マラソンで都市産業を振興
 米国オレゴン州のポートランド市が、日本の行政マンの熱い視線を受けています。高齢社会が遭遇するさまざまな行政課題を、早々とクリアーした独自の政策を実行しています。市内をコロンビア川の支流であるウィラメット川が流れ、のんびり走る路面電車はダウンタウン区域では無料です。ローズシティと呼ばれ、全米観光都市のベスト10に入る屈指の観光都市です。日本とのお付き合いも古く、ウィラメット川に臨む河川港には、日本庭園があり、修好百周年記念碑が立っています。

 毎年8月の最終の金土曜日に、オレゴン州のシンボルであるフッド山からポートランドを経て太平洋東岸まで195マイルを12人で繰り返し走りつなぐ駅伝が開催されます。千チームが参加する世界最大の駅伝です。と言っても、ほとんどは鈍足ランナーばかりです。過去2回、日本人チームとして参加しました。V6六千ccのワゴン2台を運転手付きでチャーターして、さながら二百年前の幌馬車隊の行進そのものです。結局、オレゴン州を造った幌馬車隊の祖先の功績を偲ぶイベントだったのです。日本で言うお盆の送り火みたいな行事です。

 開拓民の子孫は、やはり頭と体が産業振興の源泉であることを熟知しています。ポートランドのダウンタウンには、懐かしい路面電車が走ってます。中心市街地内は、無料です。有名なナイキの本社も郊外にあり、敷地の周囲を伐採チップで舗装したジョギングコースが整備されています。照明は頭の上から照らすのではなく、膝下部分を明るくします。走りながら、ナイキのブランドに合う商品開発のヒントやアイデアが湧くようになってるんですね。

 フッド山とは、オレゴン富士とも言われ、幌山の意味です。だから、日本の札幌と姉妹都市になっています。札幌も開拓民が造った観光都市です。観光都市は、町づくり以上に「町使い」が上手です。ポートランドも札幌も、目抜き通りを走れる市民参加のフルマラソンを持っています。それに引き替え、首都東京には、目抜き通りを走らせてくれる市民参加の42キロマラソンはありません。

 <トレンドアナリシス・走談家、走り屋・道楽衆 藤田 俊英>




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